都市ガス自由化の仕組み

都市ガス自由化で新規参入企業はどういう会社があるの?

2016/10/29

都市ガス

「都市ガス自由化されるけどどういう企業に乗り変えることができる様になるの?」

「都市ガス自由化で乗り変えられるのってガス会社以外にもあるって聞いたけどホント?」

なんてあなたは疑問に思っていませんか?

今年4月の電力自由化に続き、来年2017年4月からはいよいよガスの自由化となり、エネルギーの新時代が来ようとしています。
でも電力と調べると、ガスってどうも不透明などころが多くてわかりにくいという話をよく耳にします。
そこで今回は、先に行われた電力自由化においてのこれまでの状況や、家庭用に先駆けて自由化されている大口のガス自由化の状況を交えながら、参入を予定している企業についてご紹介しましょう。

電力自由化後の状況は?

ガスの自由化に先立ち、2016年4月から電力小売自由化がスタートしました。
ガスの自由化によって顧客を奪われる危機感から、多くのガス会社が電力市場に参入しましたが、これまでの各社の状況はどうなっているのか、参考までにご紹介しましょう。
ここまで電力会社の変更のために申込みをした人の数は、ダントツトップが都市ガス最大手の東京ガス、2位が大阪ガスと、共に自社で大規模な発電所を所有していることもあり、強さを発揮しています。
3位に付けているのが石油元売り大手のENEOSで、こちらも大規模な自社発電所を多く所有している事や、ガソリンとのセット販売などの戦略で顧客を増やしています。
4位が東急電鉄が運営する東急パワーサプライで、ケーブルテレビ・百貨店・スーパーなどとの提携によって、多くの顧客の獲得に成功しています。
5位はLPガス販売の大手サイサンのエネワンでんきで、全国各地にあるLPガス販売網をフル活用して、顧客を拡大しています。
東京電力管内に進出している大手電力会社では、タレントの香川照之などを起用して派手なCMで話題の中部電力をはじめ、九州電力・北陸電力・中国電力・東北電力などは軒並み苦戦が強いられています。

大口販売量のランキングは?

都市ガス

2017年4月に予定されているガス自由化ですが、じつは今回自由化されるのは家庭用や小規模な法人向けで、すでに1995年から大口の工場向けは自由化が始められています。
ではその大口の自由化されている都市ガスの新規参入会社はどんな企業が進出し、どのくらいの販売量になっているのかをご紹介します。
販売量ランキングの2012年度の数字を見ると、1位東京ガス・2位大阪ガス・3位東邦ガスと新規参入部門においても、実際の都市ガスの販売量と同じ上位3社がそろっている状況です。
4位が大手電力業界2位の関西電力、5位~7位が石油会社が並び、JX日鉱日石エネルギー(ENEOS)・石油資源開発・国際石油開発帝石となっています。
電力最大手の東京電力は9位で、販売量だけでは4位の関西電力の9分の1程度と、それほど都市ガス販売量は多くないようです。
その他には化学会社の三菱化学、鉄鋼会社の新日鐵住金、総合商社の三菱商事や三井物産、LPガストップシェアの岩谷産業の名前があります。

新規参入企業ガス会社編

電力自由化の時には、中部・東北・九州電力などの大手電力会社が、東京電力管内での電力販売を行ったり、東京電力が他のエリアに参入したりといった状況になりました。
ガス自由化となれば、東京・大阪・東邦の大手都市ガス会社にとどまらず、大小200社以上ある都市ガス会社が参入してくることが予想されています。
また同じガス会社でも都市ガスでは無くLPガスをメインに取り扱い、電力自由化で結果を出しているサイサンやミツウロコなど大規模に展開している会社も存在します。
LPガス会社はエネルギー市場が電力や都市ガスはシェアを増やしているのに対して、LPガスは年々シェアを減らしているだけに、都市ガス会社以上に危機意識は高いはず。
そんなLPガス会社も新たな市場開拓に乗り出してくる可能性は高いでしょう。
元々本業としているガス会社だけに、自由化されたとしてもこれまでの実績を武器により顧客獲得に必死になってくる事が予想されます。

新規参入企業電力会社編

ガス

電力自由化がガス自由化よりも1年早く行われたことによって、顧客の多くをガス会社に先行して奪われることになってしまった電力会社。
今度は電力会社がガス会社の顧客を取り戻すために、多くの電力会社がガス市場に参入することが予想されています。
元々電力会社の多くの発電所の燃料が天然ガスを使用していることもあって、各社共多くのガスの取り扱いを行っていました。
事実、国内の天然ガスの使用量は2011年の資源エネルギー庁の資料によると、1位が東京電力・2位が中部電力・5位が関西電力と上位を電力会社が占めています。
今のところ電力会社で参入を予定しているのが、東京電力・関西電力・中部電力・四国電力・九州電力です。
東京電力は都市ガス製造を一部外部委託してきましたが、50億円を投じて設備を整えて、自前で生産できるように都市ガス自由化に向けて準備を進めているようです。
また大手ガスメーカーの日本瓦斯と提携して、それぞれの顧客に対して電気とガスをセットで提供できるように準備を整えています。
九州電力も、ガス小売推進グループをガス営業部へと昇格して体制を強化し、九州最大手の都市ガス西部ガスよりも安い価格で提供できるように準備を進めているようです。
電力自由化で多少の顧客を他業種の会社に奪われたとはいえ、まだまだそれぞれの地域では圧倒的な顧客数を誇る電力会社だけに、ガスを販売されれば都市ガス会社には脅威となるはずです。
電力会社は、現在の顧客に対して電気のガスのセット販売でよりお得感を出したプランなどで、一気に巻き返しを図っていくようですね。

新規参入企業石油元売会社編

LPガス会社同様に、エネルギー市場に関しては電力と都市ガスに押されてシェアを年々減らし続けている石油業界。
そんな事情もあって、石油元売り会社も生き残りをかけて、各社共新たに自由化によって開かれた都市ガス市場に参入しようと、準備を整えています。
電力自由化の時にも多くの石油元売り会社が市場に参入してきましたが、今回のガス自由化にも最大手のJX日鉱日石エネルギー(ENEOS)や昭和シェル石油の名前が上がっています。
電力市場では躍進を遂げているENEOSですが、ENEOSは水力・風力・バイオマスと言った発電所を保有している他、天然ガスを利用した大規模な発電所を所有しています。
このように自社で電力を作り、さらには燃料となる天然ガスの取り扱いもあれば、ガス販売にはうってつけとなり、石油元売り会社ながら電力とガスのセット販売が行えて、よりお得に提供できるはず。
ENEOSを含めた昭和シェル石油・コスモ石油などの石油元売り大手は、原料調達価格を抑える目的でここに来て業務提携を行いました。
この動きはガス自由化を見据えた業務提携と見られ、石油元売り大手もエネルギー販売の市場に遅れず参入していこうと、取り組みをより強化しているようです。

新規参入企業携帯電話会社編

都市ガス

電力自由化の時には何かと露出度が高く話題になったauとソフトバンク、今回のガスの自由化にも参入してくるのでしょうか?
特にauに関しては、携帯電話を軸に電力・保険・金融などのジャンルを取り込み、総合的なサービスを提供していく会社として拡大しています。
その戦略の1手段としてガスもまた、1つの手段として取り扱いを始める可能性は十分にあるのではないでしょうか。
携帯電話会社がどうしてガスを販売できるのか不思議な感じがしますが、その背後にはそれぞれの業界各社との提携があります。
たとえばもしauがガスを販売することになっても、au自体はガスの取り扱いは無いわけですが、大手電力会社や大手石油元売り会社からガスの供給を受けての販売を行えば、容易いこととなります。
逆に直接の販売網を持たない電力会社や石油会社にとっても、知名度の高いauが販売の窓口にとなってくれれば、契約者を増やしやすくなり、お互いにメリットがあります。
ただ電力と違い、ガスの自由化の対象となるエリアはかなり限られた地域に限定されているだけに、今回のガス市場への参入については、まだ確かな情報はないので今後の情報に注意していきたいですね。

新規参入企業総合商社編

大手総合商社で電力自由化に関係していたのが、三菱商事・住友商事・三井物産・伊藤忠商事・丸紅などがありました。
しかし総合商社の場合、外国での発電所の建設や多くの天然ガスの取り扱いを行っていますが、元々販売ルートを持っていないこともあり、ほとんどが他社への後方支援にとどまっていました。
唯一丸紅だけは電力販売を直接行っている企業で、多くの自社発電所も所有している強みを発揮し、「ジブリ」をプロモーションに利用して顧客獲得に積極的です。
元々丸紅は諸外国との貿易の繋がりを持っているため、都市ガスの原料となる天然ガスの生産から流通に至るまで取り扱い、都市ガス会社にも天然ガスを卸販売する立場にもあります。
現時点ではガス自由化後の市場に参入するという情報はまだありませんが、こうした状況から考えても、丸紅の参入は十分に考えられるでしょう。

新規参入企業その他編

都市ガス

電力自由化の時は、電力会社系・ガス会社系・石油元売系といった所を中心に、再生可能エネルギーの関連企業や独自のノウハウを持った企業等、かなり小規模の会社まで登場し、数多くの会社が参入しました。
この状況をガスの自由化の時に置き換えてみると、元々ガスの取り扱いが無い会社にとっては、参入のメリットがそれほど無く、他業種からの参入企業がどれだけ現れるかは不透明な情勢です。
しかし、都市ガス自由化の時期がもっと近づいてくれば、電力自由化の時のように新たな業種からの参入企業が現れてくると思われます。
より多くの企業が参入し、業種もたくさんあるほうが消費者にとってはより魅力のある会社を選べるので、規定して状況を見守ってみましょう。

国産ガス使用会社も?

電力自由化の時は、太陽光・風力・バイオマス発電といった再生可能エネルギーをより多く使用している電力会社が人気となっていました。
これは現在国内の多くの発電所が環境にはよくない火力発電を使用している事や、その原料のほとんどを外国から輸入しているなどの理由があります。
東日本大震災以降、原発事故の影響もあってエネルギー問題に関心を持つ人が増え、出来るだけ外国からの輸入に頼らない自給自足が好ましいと多くの人が考えるようになりました。
ではガスに目を向けてみると、実は日本は都市ガスの7.4%(2010年度)ほどが国産のガスです。
現在国内での天然ガスは北海道・秋田・山形・新潟・長野・千葉・宮崎で産出されていて、特に新潟や千葉では多く産出され、パイプラインを利用して関東地方へ供給されています。
東京の青梅ガスは全体の73%を国産ガスで供給、栃木の足利ガスや群馬の太田ガスも国産ガスをより多く使用しているようです。
電力自由化時に再生可能エネルギーをより多く利用した「再生可能エネルギープラン」といったプランが登場したときのように、ガスも「国産ガスプラン」といった国産ガスにこだわったプランも期待されます。
競争が激しくなれば、このように他社と差別化を図ったより付加価値の高いプランの提供が予想され、こういった流れも自由化の恩恵の一つなのでしょう。

都市ガス自由化の恩恵はどれくらい

都市ガス

最後に、今回ご紹介した多くの都市ガス自由化に参入する予定の会社に乗り換えた時、どれほど今のコストよりもお得になるのかをご紹介します。
まず一般家庭の平均的な電気料金は、総務省2013年家計調査によると1世帯当たり月々10,674円となっていますが、ガス料金は月々5,579円と約半分となっています。
他社への乗り換えによってお得になる削減幅は5%~10%程度、平均額で削減額がもし5%だとひと月の削減額はわずか278円ほどで、これだけの金額ではそれほどお得感は感じにくいでしょう。
電気の場合は家族の人数が多かったりすれば季節によって電気料金が月々5万円を越えるといった家庭もありえますが、ガスの場合ではあまりないケースです。
そのようなこともあり、都市ガスの自由化は電力自由化のようにはお得感を感じにくく、とはいえ原価が決まっているだけに料金を必要以上に安くすることも出来ません。
参入企業は電力自由化の時以上に消費者にとって乗り換えを促進できるような、付加価値のあるサービスの提供が必要となるでしょう。

詳しくはこちらもご覧ください。
都市ガス自由化とは?メリットデメリットをわかりやすく徹底解説

まとめ

ガス自由化は、自由化されても都市ガスを利用する導管網のエリアが限定されていたり、電気料金ほどの負担額で無いので、削減額が少なくお得感が感じにくい。
地域によっては選べる会社がほとんど無いなど、消費者側から見るとまだ多くの問題を抱えています。
今後の日本のエネルギー市場の活性化のためには、今回ご紹介したような新規参入会社の躍進は不可欠となります。
こういった問題を早く克服していきながら、是非ガス自由化を成功してほしいものです。

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