都市ガス自由化とは?メリットデメリットをわかりやすく徹底解説
2016/10/29
「都市ガス自由化ってテレビで見たけれどどういう意味?」
「都市ガス自由化になると私たちにはどういうメリットがあるの?」
「でもガス会社を乗り変えるのって大変なんでしょ?」
なんてあなたは思っていませんか?
今年4月に電力が自由化され、ガス会社・携帯電話会社・ケーブルテレビ会社・ガソリンスタンド・スーパーなどさまざまなところで電力が販売されるようになりました。
じつは電力だけでなく、来年には都市ガスも自由化されます。
まだまだ知られていない、都市ガスの自由化についてのメリットデメリットを徹底解説致します。
目次
そもそも都市ガスとは
都市ガスとは、ガスの製造工場において作られたガスを地下に埋設されたガス管を使って、それぞれの家庭にガスを供給しているタイプのガスのことを言います。
都市ガスの原料はメタンを主な成分とする天然ガスで、国外から輸入している液化天然ガスが大半を占め、現在約90%が輸入に依存している状況です。
都市ガス大手として東京・大阪・東邦・西部の4社、準大手として北海道・京葉・北陸・中部など9社、その他の地方におよそ200社ほどの都市ガス会社があります。
都市ガスを使う家庭用器具では、ガス給湯器・ガスコンロなどが一番身近なところで、ガスファンヒーター・ガス炊飯器や、最近は電気とお湯を同時に作れる「エネファーム」や「エコウィル」なども普及しています。
都市ガスとLPガス(プロパンガス)の違いとは
ガスの種類に都市ガスとLPガスがあることは、大抵の方はご存知と思いますが、違いは大きく分けると2つの違いに分類されます。
1つめはガスの供給方法で、都市ガスは地下に埋設されたガス管を使用して供給され、LPガスはボンベにつめられたガスを使用する家まで運び、そのボンベから供給されます。
2つめは空気にと比較したときの重さで、都市ガスは空気よりも軽く、LPガスは空気よりも重い性質があります。
そんな性質上、ガス漏れ警報器は都市ガスは部屋の上の方に設置し、LPガスは下の方に設置します。
都市ガス自由化って何?
これまで都市ガスを供給してもらうには、東京なら東京ガス、大阪なら大阪ガスといったようにそれぞれ住んでいる地域のガス会社からのみ、ガスの供給を受けられる仕組みになっていました。
この仕組みは、ガスを安定して消費者に供給できるように「ガス事業法」という法律で決められていましたが、今後都市ガス自由化されると状況が一変することになります。
各家庭へのガスは、それぞれの都市ガス会社が所有しているガス管を使用して供給していましたが、このガス管を他の業者も託送料金という使用料を払うことで、共同で利用できるようになります。
そうなると、自分の地区の都市ガス会社以外にもガスの供給を受けることが出来るようになるので、自由化後は契約したい好きな会社と契約することが出来るようになります。
都市ガス自由化っていつから始まるの?
2017年1月より新しいガス会社の予約受付が開始され、ガスの供給元が切り替わるのは2017年4月1日以降という予定で準備が進められています。
電力自由化の時と同じように、2017年の年明け当たりから新規参入業者が続々と誕生し、それぞれの特徴を生かし、付加価値を付けたより魅力的な料金プランが発表されていく事になるでしょう。
都市ガス自由化の目的は何なの?
都市ガス自由化が行われる目的はさまざまありますが、まとめると2つの目的に絞られます。
1つめは都市ガスの料金を今よりも値下げするという目的です。
元々日本の都市ガス料金は他国と比較しても高いと言われていて、複数のガス会社が価格を競い合うことで、より料金が値下がりする事を期待しています。
2つめの目的としては顧客へのサービスの向上で、原価が決まっているガスの価格はいくら競争しても限界があるため、各社とも顧客獲得にさまざまな付加価値を付けたサービスを提供してくることが考えられます。
すでに電力自由化で新規参入会社が行っているサービスでは、電気とガスのセット割引きや、ケータイ電話料とのセット割引、使用量に応じてポイントを付与したりなどさまざまなサービスが提供されています。
電力自由化で見られるようなサービスが、都市ガス自由化によってガス業界においても見られるようになるようです。
このように、一つの会社だけではありえなかったガス料金の値下げとよりお得なサービスの提供などが、ガス自由化の最大の目的と言えるでしょう。
ガス会社のメリットは何なの?
ガスの自由化は、既存の都市ガス会社にとっては今まで独占していた販売の権利を失うことになり、デメリットと思われがちです。
でも、市場が自由化されることで今まで販売するエリアは限定されていましたが、今後は広範囲にガスを販売することが可能になり、逆に顧客を今までよりも増やすことも可能になります。
東京ガスは電力自由化に伴い、新規顧客開拓や現顧客の囲い込みの目的もあって、大規模な電力販売に力を入れています。
このようにただ黙っていては顧客は減るばかりではありますが、逆にアイデアや工夫によっては今まで以上に顧客を増やす事が出来るのが最大のメリットと言えます。
海外では自由化ってしているの?
アメリカ・イギリス・ドイツ・フランスといった主な先進国では、すでにガスの自由化が行われています。
アメリカの場合、元々国営のガス会社はなく運営も州単位で行われているために、自由化されているのは8つの州だけで、ガス自由化がうまく軌道に乗っているとは言えない状況です。
唯一ニューヨーク州だけは新規参入会社も40社を越え、競争も激しく行われているために料金も以前より安くなり、多くの人が他社への切り替えを行っています。
フランスの場合は、昔から1つの国営のガス会社が独占してガスを提供していたために、自由化されてからも価格やサービスにおいて対抗できる新規参入会社がほとんど無い状態です。
そのため旧国営の会社の独占状態は今でもほとんど変わりが無く、フランスは陸続きで他国と隣接している事もあり、価格やサービスの競争相手は、国内より国外に目を向けている傾向が強いようです。
このように諸外国は自由化は行われたものの、それぞれの国の事情もあってすべてがうまくいっているとは言えないところも多いようですね。
都市ガス自由化が始まった時のメリットとは
都市ガス自由化が始まった時の最大のメリットは、「都市ガス自由化の目的」でもご紹介したようにガス料金が下がることが期待されます。
今までは1つの会社が独占してその地域にガスを供給していたので、消費者はその会社が決めた価格で購入するしかありませんでした。
これが自由化されることにより、消費者はよりガスの価格が安い会社と契約することができるようになるので、少しでも家計の負担を減らしたい方にはありがたい制度となります。
また今までは無かった他業種とのセット割引きや、利用量に応じてもらえるポイントをためて料金から値引きしたり、産直ギフトをと交換したりとさまざまな特典が付いてくるサービス等が増えてきます。
さらには、今までは都市ガスの営業エリア外だったために、都市ガス会社とは契約できずLPガスを使用していた人も、自由化によってガスの導管網が整備されれば、LPガスより安価な都市ガスを利用することが可能になります。
ガス料金が下がる可能性がある
都市ガスが自由化されれば、料金が同じなら今のガス化会社をわざわざ変更する必要はありませんよね。
それだけに当然新規参入会社は既存の会社のガス料金よりも、わずかでも安く提供して新規契約の獲得に乗り出すはずです。
その競争が激しくなるほど、ガスの料金は安くなる可能性は高くなるわけです。
・自由化する前の都市ガスの平均的な値段はどのくらい?
2012年のデータによると、一般家庭の都市ガスの年間消費量は平均で約400㎥とされています。
1ヶ月当たりにするとおよそ33㎥となり、現在の東京ガスの20㎥~40㎥の基本料金は1,026円で、これに
利用料単価は1㎥当たり130円56銭×33㎥=4,308円48銭を加えると6,413円76銭となります。
現在の平均的な世帯構成で、夫婦2人に子ども1人の3人家族で考えた場合、およそこの6,413円76銭という金額が都市ガスの平均的な値段と言えるようです。
⇒都市ガスとプロパンガスの料金の平均相場|一人暮らしなどの世帯別も紹介
・予想ではどのくらい値段が変わるの?
現時点ではどこのガス会社の料金を発表していないために、正確にいくら安くなると言うことは断定できません。
しかし「10%以上今のガス料金よりも安くなる可能性がある」と言うような話も既に業界関係者からは聞こえてきており、他社への乗り換えによって10%程度の削減幅になる可能性が高いのではと思われます。
都市ガス自由化は既に行われていた!?
都市ガスの自由化は2017年4月から行われるのは、じつは家庭用を対象としていて、すでに大口の工場などは1995年から自由化が開始され、1999年・2004年・2007年と段階的に自由化が行われてきました。
今回の来年4月からの自由化は、都市ガスの自由化の最終段階となり、これによって都市ガスは完全自由化されたと言うことになります。
しかしこの完全自由化も小売に関する部分で、2022年には導管分離と呼ばれる東京ガス・大阪ガス・東邦ガスの大手3社からガス管の管理部門を分離しようという改革が予定されています。
この改革が行われて、ようやく都市ガスの完全自由化か完了することになります。
どんな会社が参入してくるの?
まず都市ガス自由化に伴っての新規参入会社の中でも、ガス会社の最大のライバルとなるのは東京・関西・中部などの大手電力会社です。
電力会社は多くの発電所を所有していますが、火力発電の燃料には都市ガスの原料でもある天然ガスを使用しているために、以前より多くのガスの取り扱いを行っています。
電力自由化によって、ガス会社からは1年早く電気の販売を行われ顧客を奪われてきただけに、今度は逆にガスを販売して巻き返しに必死になってくることが予想されます。
昭和シェル・ENEOSなど電力自由化にも参入している石油元売会社の参入も予想されます。
石油元売も電力会社同様に、元々多くの天然ガスの取り扱いを行っているので、ガスの販売に不安はありません。
電力自由化の時にも何かと話題になったau・ソフトバンクなどの携帯電話会社も参入を検討していると思われます。
携帯電話会社は、ガスのノウハウは無いものの自社での圧倒的な顧客数と全国各地にあるショップが活用できるのが強みです。
他にも様々な業種からの参入が予想され、それぞれの強みを生かしたサービスを提供してくれるでしょう。
都市ガス自由化によるデメリットとは
都市ガスが自由化されれば、価格競争によって料金は一時的には安くなると思います。
しかし、ガスの原料の価格は常に変動し続け、外国から原料のほとんどを輸入している日本の場合、特に国際情勢に大きく左右されてしまいます。
そのため自由化によって多くの新規参入の会社も、原料の変動に対応できなくなると価格が今までよりも変動しやすくなり、不安定な状況になる危険性があります。
地方だと選べるガス会社が限られる
自由化のデメリットとしてもう一つ上げられるのが、東京や大阪などの大都市部では、自由化後に選択できるガス会社も数多く存在するので、自由化の恩恵を受けやすくなります。
一方で地方の場合は、自由化後にも選べるガス会社の数に限りがあり、いろいろな会社と比較しにくいといったデメリットがあります。
都市ガス自由化で安全面は大丈夫なの?
これまでもガスは爆発事故など「危険」といったイメージがありますよね。それだけに都市ガスが自由化されて、そんなガスの安全性に不安を感じている人も多いのではないでしょうか。
しかし、ガス自体は「ガス事業法」という法律によって、しっかりと品質管理されています。したがって今までより安く供給されているからと言って、品質が悪いガスが供給されるようなことはありません。
万が一ガス管の破損などによってガス漏れなどが発生したとしても、今までと変わらずそれぞれの地域のガス会社が責任を持って対応してくれるので、そういった不安も不要です。
都市ガス自由化してもそのままにしていても大丈夫?何か手続きはいるの?
都市ガスの自由化が行われたとしても、今のガス会社を変更する予定が無ければ特別な手続きや連絡などは一切必要ありません。
今まで通り変わらずガスの供給を受けることが出来るので、安心して使用しましょう。
電力自由化の時にも、自由化になると変更が必要というような詐欺まがいの勧誘業者も現れる可能性があるので、十分に注意しましょう。
ガス会社の乗り変えの手順はどうしたらいいの?
まず乗り換えるガス会社はどこが一番良いか決まったら、次にそのガス会社に電話やWebなどで申込みを行います。
今まで契約していたガス会社への切り替えの連絡は不要で、現在既に都市ガスを利用していればガスの元栓の開閉の必要もありません。
新しく契約したガス会社より切り替わる日の通知があるので、その日から新しいガス会社へと移行することになります。
乗り換えの手続きは何かと面倒と考えている方も多いようですが、決して面倒な手続きなどなく簡単に乗り変えができます。
ガス会社を乗り変える時には費用はどのくらいかかるの?
ガス料金が安くなったとしても、乗り換えるための費用に数万円の費用がかかるのでは、なかなか簡単には乗り換えできませんよね。
しかし、実際にはガス会社を乗り換えるときに事務手数料を取るところでも3,000円程度で、手数料を無料で対応する会社も予想され、費用としては0円~3,000円程度と考えておいて間違いないでしょう。
ガス漏れ警報器の設置については、基本的に設置は義務では無いので、警報器の設置のための費用負担は考えなくても良いです。
ただ3階建て以上の共同住宅や、立消え安全装置がないガスコンロを使用しているなど条件によっては設置が義務化となる場合もあり、そういった時は別途設置費用が発生します。
ガス会社を乗り変える時には工事は必要なの?
ガス会社を変更するには、今まで供給していたガス管の交換・コンロや給湯器の設備の交換なんて事は一切不要です。
今まで使用していたガス管は、自由化によって共同使用が可能になるために、ガス会社を変更してもガス管の交換は不要で、もちろんコンロも給湯器の交換も必要ありません。
ですので基本的に自由化後のガス会社変更に伴う、乗り換えのための工事は不要と考えて大丈夫です。
ガス会社が倒産したりしたらどうなるの?
自由化後に契約したガス会社が万が一突然倒産してしまったら、ガスの供給はどうなるの?っと心配になりますよね。
でも仮にガス会社が倒産してしまっても、ガス管を所有している導管会社は「最終保障供給約款」というものを準備しているので、急にガスが止まってしまうようなことはありません。
しかし「最終保障供給約款」というのは、緊急事態に対応した一時的な措置なので、そういった状況になる場合は、導管会社から1ヶ月後にはガスが停止するという通知が届くことになります。
通知が届いてからガスが停止するまでの1ヶ月の間に、別のガス会社を選択して契約し直すことになります。
戸建ての持ち家や分譲住宅はガス会社を乗り変えることができる?
戸建ての持ち家や分譲住宅の場合でも、ガス会社を乗り変えを行うのには特別な制限などは無く、自由にガス会社を選んで乗り換えることが出来ます。
新築の戸建ての持ち家や分譲住宅だと、「エネファーム」や「エコウィル」を使用した発電設備を導入しているケースが多いですが、「エネファーム」や「エコウィル」を使用していても、乗り変えるには支障ありません。
また多くのガスを必要とする「エネファーム」や「エコウィル」だけに、「エネファーム」専用プランといったよりお得なプランが新規参入会社から提案される可能性があるので、是非活用したいですね。
分譲マンションはガス会社を乗り変えることができる?
分譲マンションに現在入居しているケースでも、すでに都市ガスを使用しているのであれば、ガス自由化に伴うガス会社の乗り換えは問題なく出来ます。
今使用している都市ガスの導管をそのまま利用することが出来るので、特別な工事の必要も無く申込みを行うだけで乗り換えられます。
賃貸住宅や賃貸マンションや賃貸アパートはガス会社を変えることができる?
賃貸住宅や賃貸マンションや賃貸アパートなどの場合、他の人から借りているから勝手にガス会社を変えることは出来ないと思われがちです。
でもそんなことは無く、元々乗り換えに工事などは不要なので、現在他の都市ガスを使用しているのであれば、問題なく好きなガス会社を選んでの乗り換えが出来ます。
供給されているガスが都市ガスの場合は乗り換えは問題ありませんが、LPガスの場合は管理会社や大家さんにガス会社の選択権があるために、自由に乗り換えを行う事が出来ません。
都市ガス自由化の問題点や課題とは
都市ガスの最大の目的としているところは、現在のガス料金を今よりも安くすることにあります。
しかし多くのガス会社がある地域は大都市部に限定されていて、地方では競合するガス会社はほとんどまだ無い状況です。
そのため競争によって価格が安くなるような恩恵を受けられるのは、今のところ競合する会社がひしめく、都市部に限定されていることが問題としてあげられます。
また、そもそも都市ガスの普及率を調べると、2013年で東京・大阪・京都などの都市部では100%を越えていますが、低いところでは沖縄の35.7%や青森の36.5%などとなっています。
こうした数字から見ても、都市ガス自由化でより安いガス会社を選べると言っても、都市ガスが普及していない地域が未だ半分ほどあることになります。
都市ガスが普及していない地域の人にはガス自由化の恩恵は無く、都市ガスよりも2倍近い価格差があるLPガスを依然として使わなければいけません。
電力自由化のようにほとんどの地域の人が好きな電力会社と契約して電気を買えるという状況と比べると、都市ガス自由化はまだまだ課題が多いと言わざるを得ないようですね。
電力自由化の乗り換え率は?ガス自由化は?
ガスの自由化に先駆けて自由化された電力ですが、資源エネルギー庁の調査によると2016年6月10の時点で、全国で110万世帯の家庭で他社に乗り換えを行っています。
全国の世帯数を5,000万世帯として計算すると、全世帯の2.2%の世帯で電力会社を変えたという事になります。
電力会社の場合、沖縄地区の除くすべての地区で他社に乗り換えることが可能ですが、都市ガスの場合使用する導管の整備がまだ整ってない地域ある為に、限られた地域の家庭だけが対象となります。
世の中の関心も電力自由化の時ほど高いとは言えず、今後自由化の影響で導管の整備が進めは多くの家庭でお得な都市ガスが利用できるので、早く整備を進めてほしいものです。
さいごに
いろいろと問題点もあるガス自由化ですが、自由化されれば今までよりも安い料金でガスが利用できるようになったり、様々なお得なサービスが付いたりと利用者からすれば魅力のある制度です。
まだ準備段階と言うこともあって不透明な部分も多くありますが、いざ自由化が近づいて慌てないように、今のうちからしっかりと情報収集に努めておきましょう。