都市ガスの知識

都市ガスの成分は事業者によって違う?自由化の影響は?

2016/10/29

 

「都市ガスの成分って会社ごとに違うの?」

「都市ガスが自由化すると成分の違いとかは大丈夫なの?」

「そもそも都市ガスって何でできているの?」

なんてあなたは思ってはいませんか?

いよいよ都市ガスの自由化も2017年4月と近づいてきました。
都市ガスが自由化されれば、小売市場の競争も激しくなることでより料金も安くなり、サービスも充実してくると予想されています。
電力自由化の時は電力には販売する会社によって種類が違うようなことはなく、どこの会社と契約しても同じに電力を供給してもらえました。
しかしガスの場合は、販売するガスの成分はガスを産出しているガス田によって成分が違い、熱量にも違いが出てくるので、販売する事業者によって成分や熱量が違ってしまうという問題があります。
こういった問題は都市ガス自由化にどのような影響を与えるのか、今後の自由化に向けての課題にもなっている問題について検証してみました。

都市ガスの種類は?

一般的に私たちが使用しているガスは、都市ガスが7グルーブ13種類、及びLPガスに分類されます。
都市ガス7グループには13A・12A・6C・5C・L1・L2・L3に分けられていて、さらにL1グループは6B・6C・7Cの3種類に、L2グループは5A・5B・5ANの3種類に、L3グループは4A・4B・4Cの3種類にそれぞれ分けられています。
13Aなどと表示されているガスの種類は数字と英字で組み合わされていて、それぞれに意味があって表示されています。
13の数字はガスの熱量と比重によって決められるウォッベ指数を1,000で割って小数点を切り捨てた数字に該当しています。
英字は燃焼性の種別を表示していて、燃焼速度をA(遅い)・B(中間)・C(速い)と3種類に分類しています。

都市ガスの13Aと12Aの違いとは?発熱量の違い?

都市ガスの熱量は?

ガスの「熱量」とは、ガスが燃焼するときに発生する熱の量のことで、「発熱量」と呼ばれる場合もあります。
熱量の単位にはメガジュールが使われています。
東京ガスの場合で言うとガスの種類は13Aですが、1㎥当たりの発熱量は東京都・神奈川県・千葉県・茨城県・栃木県・埼玉県は45メガジュールで、群馬県は43.14メガジュールとなっています。
この熱量は都市ガスの成分の約90%がメタンガスで、残りのエタン・プロパン・ブタンを含めたガスを気化させるとおよそ44.4メガジュールになります。
全国的に都市ガス事業者の熱量は、やや余裕を持たせて46メガジュールにしているところも多いですが、最近はメタン濃度の高い良質な天然ガスが産出されています。
そのために天然ガス単体を気化した時の熱量は少し下がるので、東京ガスなど熱量を45メガジュールにしているところが増えています。
しかし熱量を46メガジュールから45メガジュールに変更すれば、ガス事業者のガス使用量は増えることになり、わずか1メガジュールの熱量とは言え簡単に変更できません。
そのような理由から、未だに各都市ガス事業者が販売しているガスの熱量は、完全に統一が出来ていない状況にあります。

都市ガスの圧力は?

都市ガスは都市ガス工場から各家庭にガスを送る場合、ガス管を使って行き渡らせているので強い圧力がかけられています。
工場など大量のガスを使用するところでははじめらから強い圧力が掛かった状態で供給されて、一般家庭などでは強い圧力が掛かっていると危険なために、ガス管の経路に変圧器を付けて圧力を下げています。
都市ガスの圧力の単位にはキロパスカル(kPa)が使われていて、13Aのガスの場合は標準圧力が2.0キロパスカル、最高圧力2.5キロパスカル、最低圧力1.0キロパスカルとなっています。
都市ガスが正常に燃焼するためには一定の圧力が必要となるために、ガス事業法で供給される圧力はこのように定められています。

都市ガスのCO2排出係数は?

都市ガスは燃焼すると二酸化炭素(CO2)を発生しますが、この二酸化炭素の発生した量をCO2排出係数といいます。
東京ガスで使用している13Aのガスの場合、CO2排出係数は一般家庭用の低圧供給の時は2.21kg/m3になっています。
工場や商業ビルなどの中圧供給の場合のCO2排出係数は、2.19kg/m3になっていて一般家庭用とは若干違う数字となっているようです。
このCO2排出係数に実際に家庭で使用した都市ガスの量(㎥)を掛ける事によって、都市ガスの燃焼によって発生するCO2排出量を計算することが出来ます。

都市ガスの成分は事業者によって違う?

代表的なガスの種類でもある13Aの成分は、東京ガスの場合でメタン89.60%・エタン5.62%・プロパン3.43%・ブタン1.35%といった構成比になっています。
これが大阪ガスの場合だとメタン88.9%・エタン6.8%・プロパン3.1%・ブタン1.2%となり、東邦ガスの場合では87.5%・エタン5.9%・プロパン5.3%・ブタン1.2%・窒素0.1%となっています。
大手3大都市ガス会社の成分の構成費を比較してみてわかるように、ガスの種類は13Aで同じですが、成分はそれぞれの都市ガス会社によって微妙に違っているんです。
このように都市ガスの成分が事業者によって違い、そのため熱量も統一されていないために、熱量調整という方法を行っています。

都市ガス熱量規格統一問題!

現在の都市ガスの熱量はご紹介した通り、事業者とも輸入している天然ガスの産地が違う為に熱量がまちまちになっている実情です。
従来の都市ガス供給では、供給地域ごとに一定の基準を設けて熱量を決め、使用した体積に比例して課金を行っています。
これは規格が統一されていない不公平さを熱量を調整することで、安定供給と公平な料金の課金を行う事を目的として実施されてきていました。
当然この熱量調整にはかなりのコストが掛かっているために、料金の高騰に影響しガス自由に向けての料金値下げの足かせになるとの意見が出されています。
それでもこの熱量調整にかかるコストも以前より軽減されていることもあって、現在でも熱量調整は引き続き行われていくようです。

都市ガス自由化の影響は?

現在都市ガスは熱量調整を行う事で、成分が違うことによる不公正さを無くすように義務化されています。
元々天然ガスをたくさん輸入して電力発電に利用している電力会社などでは、コストが掛からない未熱調整ガスを利用して、ガス自由化でのガスの小売事業に利用できるのではと期待しています。
しかし現在はガス会社と電力会社が二重に導管を運用することで、非効率にならないように国が電力会社に対して、ガスの供給についての変更・中止ができる「二重導管規制」という制度が行われています。
電力会社が未熱調整ガスを販売するためには、熱量調整が必要な現在の都市ガス事業者の既存導管を利用することは出来ないため、新たに導管を敷設する必要があります。
しかしこの「二重導管規制」があるために、新たな導管の敷設はできないので、今の制度では未熱調整ガスを販売する事が出来ません。
そのため電力会社は国に対して規制緩和を行うよう強く働きかけている段階です。

まとめ

電力自由化の時には、ガス会社や石油元売り会社をはじめ携帯電話会社やケーブルテレビ会社・電鉄会社など様々な業種が新規参入しました。
しかし都市ガス自由化の場合は、ガスの成分の違いによる熱量の問題の影響もあって、新規参入会社はガスの取り扱いが無い事業者にはややハードルが高い分野のようです。
やはり都市ガス自由化によって、現在の都市ガスの乗車の最大のライバルになるのは各大手電力会社と言うことになりそうです。
今後の都市ガス自由化に向けてどのように制度が変えられていくのか、自由化以降のガス料金にも影響するだけに、注意深く見守っていきましょう。

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